「エンカのエンは怨みのエン」 サンデー毎日 1975年11月30日号
幼稚園のころから、先生が教えてくださる”幼稚園ナンバー”を歌わず、自分で勝手につくった曲を口ずさんでいたから、作詞、作曲を始めたのは、そのころからっていうのは、ちょっとオーバーですね、フフフ・・・。
でも、その考えはいまでも変わってないんです。自分の歌のいい悪いは別にして、私自身の曲が一番好きという点では変わりません。中学二年のとき、初めて正式にオタマジャクシを入れて作詞、作曲を手がけ、これまでに百三十曲かしら。
とくにレパートリーにこだわってはいません。十一月十四日から三日間、武道館で行われた世界歌謡祭で歌った「時代」(ポプコン秋のグランプリ曲)は、メッセージとしての音楽、キャニオンから出した「アザミ嬢のララバイ」は怨歌(えんか)、エンカのエンは、ウラミのエンですからよろしく・・・。
私の曲は演歌でもなく、艶歌でもなく、怨歌でありたい。何というのかしら、人間の心象を歌で表現しようとすれば、どうしてもウラミの「怨」がぴったりすると思うの。とくに、カッコよく見せようとしてるわけではありません。もう一つの私のレパートリーは、口ずさめるようなメロディアスな曲。この三つをパターンにして、歌手としての”出番”を迎えました。
小さなステージでは、ちょこちょこ歌ってたから別にアガるってこともないけど、武道館のような大きなところはまた別ですわね。各国から歌手が集まってレセプションがあったとき「この人たちと歌うのか」と思うと、もうドキドキしちゃって・・・。自分のエントリー・ナンバーもうっかり忘れてしまうところでした。
いまのポップス界は、自作自演の人たちが多いですね。既成の歌がどうこうというよりそれだけバラエティーに富んだ曲が生まれるってことで、いいことじゃないかしら。そして、もっと広がりが出てくると思うんです。歌ってものはみんなのものだし、だれもが身近に持っていていいものでしょ。カケ出しのクセに、ちょっと生意気かな、フフフ・・・。
自信とか展望とか、今後の私については、断言できるものはありません。ただ、自分の信ずる道を、しかもプロのはしくれとして力いっぱいやってみようとすることだけです。
私のトシ?・・・サンです・・・。もちろん、三十三ではありませんから、よろしく。がんばります。やってみます。
【注釈】世界歌謡祭でグランプリを獲って程ないころに受けたインタビューでしょう。中島みゆきの出発点がここにあります。ただ、「アザミ嬢のララバイ」が怨歌だとは私には思えません。中島みゆきがインタビューでしばしば見せる「はぐらかし」ではないかと推測します。